No011:申請書等の作成方法(2)

Last Updated on 2023年4月29日

 今回は「申請書等の作成方法」の第2弾として、医薬(部外)品製造販売承認申請書を例にどのような書式でどのようなことが書かれているか(特に表紙部分)についてご紹介したいと思います。

 医薬品製造販売承認申請書は文字通り(厚生労働省から)医薬品の製造販売の承認を得るために製薬会社から独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)を通じて厚生労働省に申請する書式になります。前回紹介しました通り医薬品の場合は医薬品等電子申請ソフト(以下、FD ソフト)を用いて作成されます。
 では、実際にどのような書式かを示したいところですがページ数の多い申請書を一度の記事で表示することは難しいため、参考のリンクも併せて一部お示ししたいと思います。

 まず全体像として、医薬部外品ではありますが製造販売承認申請書のMOCK(例示)が公開されているため参考リンクを下記に掲載します。

リンク:https://www.pmda.go.jp/files/000230404.pdf
(独立行政法人医薬品医療機器総合機構ウェブサイト)

 残念ながらWEB上で公開されている医療用医薬品の製造販売承認申請書のMOCKは確認できませんでした。しかし、医薬部外品の承認申請書も医薬品と同じFDソフトを使用して作成することから申請書としてのリンク先から雰囲気は同じように掴めると思います。実際のPMDAへの申請時には申請書に加えてCTD、その他資料が必要になってきます。

 私も医薬品承認申請書のMOCKを作成してみましたので、その一部(今回は表一枚目のみ)をお示しいたします。

 あくまでMOCKの架空の情報なので実在する医薬品、住所および氏名と関連はございません。なお架空の医薬品名としてアオザカナミラクル錠100mgという販売名を当てはめましたが”英語としての意味を有する名称”及び”品位に欠け虚偽又は誇大と思われる名称”は医薬品の名称として認められていないため少なくとも”ミラクル”は医薬品販売名として悪い見本となっています。

 上の画像ですが、ぱっと見で情報量の少ない表紙に見えると思います。空欄の部分が多く目立つのですが、空欄になっている部分は実は入力することができません。まず、この一枚目を申請書の”鑑(かがみ)”と言います。請求書の表一枚目や添付する送付状について商取引の慣習上、鏡/鑑と呼ばれているそうですが、同じ意味合いだと思われます。”鑑”自体の意味の一つには「規範とするべきもの」とあるので古くの由来になっていると考えます。ちなみに私が薬事職として働いて最初の質問は「鑑って何ですか?」でしたので薬事や申請書に関わらないと出てこない言葉かもしれません。
 話を戻しまして、申請書の鑑には記入欄がたくさんあるのに空欄が多いです。これはあくまで2ページ目以降(DTD 一覧、あるいはFD内容の打ち出し、などと呼ばれています)の申請書の内容を簡潔に記した頭紙/送付状であり、FDソフトの入力画面に沿って入力されたデータを元にソフト上で鑑ページを作成してくれるため、空欄になっている箇所は入力しようと思っても入力できません。鑑に記載されている項目は空欄であっても、各項目について必要なデータが2ページ目以降で出力・記載されるため鑑の項目は空欄のままでも問題ありません。逆に昔は記載していたことがあったのでしょうか?今となっては聞く機会がなかったり気にする人もいないのかもしれませんが、あったとしたら恐らくFDソフトの運用前の1990年代以前ということになるでしょうか…。
 なおPMDAのHPには医薬品医療機器法施行規則様式である申請書の様式をWardとPDF形式でダウンロードできるページ(下記リンク参照)があります。しかし基本的に鑑はダウンロードしてWard•PDF上で作成するということはなく、FDソフトで入力したデータを元にFDソフトから印刷・出力します。鑑をWard•PDFで準備して受理されたという話を聞いたことがないですがFDソフトの入力情報と齟齬があった時点で受理されないでしょう。聞いた話ですが、FDソフトを使わずに窓口で申請しようとしてPMDA窓口で門前払いに合った(未経験)申請者もいるようです。ダウンロードできるからといって申請に利用するものではないという、罠のようなページと私個人は考えています。

リンク:https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/procedures/0004.html
(独立行政法人医薬品医療機器総合機構ウェブサイト)

 現在はオンライン申請が主流になりつつあり、社印・公印とも省略される傾向にありますがコロナ禍に至るまでは鑑に社印を押すことが当たり前でした。そして、受付に提出すると同時に会社控え用の申請書の鑑にPMDAの受付印をもらうことで受理=提出完了でした。現在もオンライン申請時に鑑を別途郵送・提出することで受付印をもらうことは可能です。手続きによってはPMDAの受付印の入った申請書の写しが求められることもあったのですが、”申請書等をオンライン提出した場合、従来の「受付印を押印した控え」に代えて「受付票」が発行され、各種行政手続に使用できる。”※ ということでもはや受付印は必要ないと言えるかもしれません。(但し書きとして、”手続によっては、当該申請書等の内容を確認するために別途当該申請書等の写しが必要となることに留意すること。”※※とある点に注意が必要です)

※ リンク:https://www.pmda.go.jp/files/000242972.pdf
(独立行政法人医薬品医療機器総合機構ウェブサイト)

※※ リンク:https://www.pmda.go.jp/files/000248066.pdf
(独立行政法人医薬品医療機器総合機構ウェブサイト)

受付票の見本
リンク:https://www.pmda.go.jp/files/000241477.pdf
(独立行政法人医薬品医療機器総合機構ウェブサイト)

 今回は申請書の表紙にあたる鑑についてご紹介しました。鑑自体に情報量は少ないものの特有の作法があることがお分かりになったかと思います。薬事職としての常識、あるいは医薬品承認申請に関する豆知識としてお役に立ちましたら幸いです。

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