No 007:GxPについて

Last Updated on 2023年1月15日

今回はGxPについて簡単にまとめましたので、ご紹介します。

はじめに

私は医薬品の開発職(CRA )からキャリアをスタートしましたのでGCP(Good Clinical Practice:医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令) についてはかなり頭には入っているつもりです。しかし、GCPだけが医薬品に関する省令ではありません。製造に関するGMPや製造販売後臨床試験に関するGPSPなどについても開発業務を通して耳にしてきました。GCP以外についてはこれまで深く知る必要はございませんでしたが薬事職に転属して、GCP から距離を置くようになった一方で他のGxPについて耳にする機会が増えました。現状で仕事上必ずしもGxP 全てを知る必要はないと思いますが、薬事職として様々な情報を取り入れていかなければいけない一方で知らないGxPがあると、その周辺知識がブラックボックスとなって理解や業務の支障になる場合があります。従って、自身の勉強も兼ねて今回は日本で適用されているGxPのさわりについて以下の通りまとめてみました。なお、説明内容は医薬品を主体としていますが医療機器や再生医療等製品における省令についても書き出しております。

GLP:医薬品・医療機器の安全性に関する非臨床試験の実施の基準

英名:Good Laboratory Practice
医薬品:医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令(厚生省令第21号)
リンク:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=81997378&dataType=0&pageNo=1(厚生労働省ウェブサイト)
医療機器:医療機器の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令(厚生労働省令第37号)
リンク:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=81aa6872&dataType=0&pageNo=1(厚生労働省ウェブサイト)
再生医療等製品:再生医療等製品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令(厚生労働省令第88号)
リンク:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=81ab4167&dataType=0&pageNo=1(厚生労働省ウェブサイト)

非臨床試験すなわち動物試験の実施に関する省令です。GLP は非臨床安全性試験に限らず基礎研究分野においてもその一部(データの記録、資料保存施設、試験施設の体制、など)が十分に活用可能であると言われています(※)。薬事として計画書や報告書を確認する機会があるとともに、 GLP関連資料は記録の保管が一番厳しい印象があります。GLP省令を満たす保管所であれば、他の省令をクリアしているのではないかと思っています(記録の保管における各省令の違いは別の機会にまとめたいと思います)。個人的には信頼性保証部門(名称自体は企業によって異なります)が試験責任者とは別に試験を運営管理する点は知りませんでした。疑問もなく報告書に試験実施者とは別に信頼性保証部門が署名されていることを見ていましたがGLP省令で求められていたんですね。

※参照元:Kanako Ito, Hitoshi Someya:YAKUGAKU ZASSHI 139, 875-879 (2019), Good Laboratory Practice: Initial Development, Necessity,and Issues of Data Reliability in Basic Research

GCP:医薬品・医療機器の臨床試験の実施に関する基準

英名:Good Clinical Practice
医薬品:医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(厚生省令第28号)
リンク:https://www.pmda.go.jp/int-activities/int-harmony/ich/0076.html(独立行政法人医薬品医療機器総合機構ウェブサイト)
医療機器:医療機器の臨床試験の実施の基準に関する省令(厚生労働省令第36号)
リンク:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=81aa6871&dataType=0&pageNo=1(厚生労働省ウェブサイト)
再生医療等製品:再生医療等製品の臨床試験の実施の基準に関する省令(厚生労働省令第89号)
リンク:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=81ab4168&dataType=0&pageNo=1(厚生労働省ウェブサイト)

臨床試験・治験の実施基準に関する省令です。企業治験・医師主導治験における依頼者(実施者)、医療機関、治験医師そして治験審査委員会がそれぞれの業務をどのように実施するべきか、被験者の人権の保護及び安全の保持や成績の信頼性確保などを目的としています。医薬品に関して(開発)薬事としては開発部門とともに各相(I〜Ⅲ相)の試験前後にPMDA と試験計画や試験成績について相談を行いますが、その手続きや資料の作成を行います。相談内容の結果は試験や開発の方向性を左右します。そしてⅢ相試験が終わると全ての試験成績のデータをまとめて製造販売承認申請いたします。申請のための申請書及びCTDの作成や、執筆の取りまとめを薬事が担うことが多いと思います。

GMP:医薬品、医薬部外品の製造管理・品質管理の基準

英名:Good Manufacturing Practice
医薬品:医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(厚生労働省令第179号)
リンク:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=81aa6647&dataType=0&pageNo=1(厚生労働省ウェブサイト)
再生医療等製品:再生医療等製品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(厚生労働省令第93号)
リンク:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=81ab4197&dataType=0&pageNo=1(厚生労働省ウェブサイト)

医薬品又は医薬部外品に係る製品の製造業者及び外国製造業者の製造所における製造管理及び品質管理の基準に関する省令です。医薬品を製造する限り、国内外問わずGMP省令の遵守が求められます。そして薬事申請と製造管理は切っても切り離せない関係だと思います。製造に係る変更は全て軽微変更届を提出するか、製造販売承認事項一部変更申請(以下、一変申請)して承認を受ける必要があります。製造に係る一変申請承認では省略できる場合を除いてGMP適合性調査が実施されます。常に製造所関連には薬事は気を払う必要があると思います。
なお、医療機器は下記の「医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」となりQMS省令となります。従って、医薬品であればGxPにすべて集約できますが医療機器ではGxP&QMSということになると思います。

英名:Quality Management System
医療機器:医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(厚生労働省令第169号)
リンク:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=81aa6618&dataType=0&pageNo=1(厚生労働省ウェブサイト)

GQP:医薬品、医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品の品質管理の基準

英名:Good Quality Practice
医薬品、医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品の品質管理の基準に関する省令(厚生労働省令第136号)
リンク:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=81aa6392&dataType=0&pageNo=1(厚生労働省ウェブサイト)

GMPもGQPも日本語では品質管理という言葉が入るので紛らわしいのですが、GMP は製造所内での品質管理の基準に関する省令で、GQPは製造所(内)外全般の品質管理の基準に関する省令に差別化されます。具体的にはGMPで製造工程や構造設備、試験検査設備に関する手順が定められる一方でGQPでは市場への出荷の管理、適正な製造管理及び品質管理の確保、品質等に関する情報及び品質不良等の処理、回収処理などの手順が定められます。GQPでは医療機器以外は適用されている一方で医療機器が含まれていないところも大きな点です。医療機器に関しては前述のQMSのみで完結しています。薬事としては、GQPの各場面で求められる資料名を押さえておくと製造所まわりの進捗がクリアになると思います。

GPSP:製造販売後の調査・試験の実施基準

英名:Good Post-marketing Study Practice
医薬品:医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令(厚生労働省令第171号)
リンク:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=81aa6623&dataType=0&pageNo=1(厚生労働省ウェブサイト)
医療機器:医療機器の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令(厚生労働省令第38号)
リンク:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=81aa6873&dataType=0&pageNo=1(厚生労働省ウェブサイト)
再生医療等製品:再生医療等製品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令令(厚生労働省令第90号)
リンク:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=81ab4169&dataType=0&pageNo=1(厚生労働省ウェブサイト)

製造販売承認後に品質、有効性及び安全性に関する情報の収集、検出、確認又は検証のために行う調査又は試験に関する基準です。具体的には「使用成績調査」「製造販売後データベース調査」「製造販売後臨床試験」などが当てはまります。私は経験ないのですが、薬事としては再審査の申請手続きや申請資料の作成に関わることになると思います。

GDP:医薬品の適正流通ガイドライン

英名:Good Distribution Practice
医薬品の適正流通ガイドライン (注:省令ではない)
リンク:https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000466215.pdf(厚生労働省ウェブサイト)

医薬品の品質維持や流通過程での完全性の保証するためのガイドラインです。医薬品の市場出荷後、薬局、医薬品販売業、医療機関に渡るまでの医薬品の仕入、保管及び供給業務に適用されます。質疑応答より医療機器や再生医療等製品はこのガイドラインの適用外とされています。
薬制としては関わりがあると思うのですが、今のところ私個人の薬事業務ではまだ知らなくて困らないようです。

GVP:医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の製造販売後安全管理の基準

英名:Good Vigilance Practice
医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の製造販売安全管理の基準に関する省令(厚生労働省令第135号)
リンク:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=81aa6391&dataType=0&pageNo=1(厚生労働省ウェブサイト)

製造販売後の安全管理情報の収集や検討、必要な措置に関する業務であったりリスク管理(計画書)、市販直後調査に関する省令です。こちらも薬制として関わりはあると思いますが私個人の薬事業務では今のところ深いつながりはないです。ただし製薬会社・医療機器会社社員であれば研修必須でおなじみです。

おわりに

以上、日本で適用されているGxPに該当する省令/ガイドラインについて書き出してみました。上記のほかにも臨床試験検体に関するGCLP(Good Clinical Laboratory Practice)などもあり、流通に関する省令が今後正式に施行される可能性もあります。より適切な規制に向けて今後も新たなGxPが生まれるかもしれません。なお海外では違った GxPが存在します。GDP がGood Documatation Practiceを意味する国もあるので海外ではまたGxPを学び直す必要があります。
日本におけるGxPに該当する省令/ガイドラインを医薬品と医療機器とでそれぞれのライフサイクルに分けてどのようにGxP が確立されていったか図にまとめてみました(ステージによっては同時進行する場合もあります)。

今回、調べてみて名称からGxPに収まらないQMS省令があったりGDPは省令ではなくガイドラインだったりと、調べてみるまで曖昧で済ましていた部分もあり勉強になったなと思います。また医薬品、医療機器及び再生医療等製品で異なる省令を整理できたことは今後の自己学習のきっかけにできたと思います。今回はまだGxPを列記したような状態ですので、今後また各省令/ガイドラインに焦点を当てて学んでいくとともに紹介できたらと思います。

最後に述べるのも恥ずかしいところですが、内容には注意を払っているものの専門の方からみて明らかに違う内容があればコメント・ご指摘いただけますと大変助かります。

省令の上位にあたる”医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)”に関する以下の記事も是非ご覧ください。

No009:いまさら聞けない薬機法と法体系について

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